行政書士試験の難易度を調べると、「合格率10%台の難関」と書かれた記事と「働きながらでも取れる」と書かれた記事が同時に出てきます。どちらも間違いではないのですが、独学で受けるかどうかを決めたい人にとっては、この情報だけでは判断できません。
この記事では、年度別の公式合格率を並べたうえで、その数字が独学者にとって何を意味するのかを試験の仕組みから読み解きます。
本文の試験に関する数値は、行政書士試験研究センターの公表内容にあたって確認し、確認日を明記しています。伝聞や他サイトの引き写しではないので、数字はそのまま計画づくりに使えます。
- 年度別の公式合格率(令和3年度〜令和7年度)
- 合格率が低く見える3つの理由
- 独学者にとっての難易度を決める4つの仕組み
- 他の国家資格と比べた位置づけ
試験結果・試験制度は2026年8月18日に各実施機関の公表内容を確認したものです。
結論:合格率は11〜15%台。ただし独学者に効くのは合格率ではない

行政書士試験の合格率は直近5年で11.18%〜14.54%の範囲にあり、単純な数字だけ見れば難関に分類されます。
ただし独学で受けるかどうかを判断する材料としては、合格率よりも試験の評価方式のほうが重要です。
理由は、この試験が相対評価ではないからです。300点満点で180点を取れば合格する基準点方式のため、上位何%に入る必要がありません。
合格率が14%だからといって「受験者の上位14%に入らないと受からない」わけではなく、6割を取った人が全員合格した結果が14%だった、という関係です。
したがって独学者が見るべきなのは、合格率という結果の数字ではなく、6割を取るまでの障害がどこにあるかです。
年度別の合格率推移(令和3年度〜令和7年度)

直近5年の合格率は11.18%〜14.54%で推移しており、令和7年度(2025年度)が5年間で最も高い数字でした。
受験者数も5年間で最多です。
※表は横にスクロールできます。数値は一般財団法人 行政書士試験研究センターの公表値(2026年8月18日確認)。
| 年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 令和7年度(2025年) | 50,163人 | 7,292人 | 14.54% |
| 令和6年度(2024年) | 47,785人 | 6,165人 | 12.90% |
| 令和5年度(2023年) | 46,991人 | 6,571人 | 13.98% |
| 令和4年度(2022年) | 47,850人 | 5,802人 | 12.13% |
| 令和3年度(2021年) | 47,870人 | 5,353人 | 11.18% |
年度によって2〜3ポイントの幅がありますが、これは合格ラインが動いているわけではありません。
合格基準(法令等50%以上・基礎知識40%以上・総得点60%以上)は毎年同じで、変動しているのは出題の難易と受験者層です。
ただしセンターは「試験問題の難易度を評価し、補正的措置を加えることがあります」と明記しており、実際に平成26年度は補正的措置により合格基準が総得点180点から166点へ、法令等が123点から110点へ引き下げられました。
つまり、当たり年・外れ年を狙う意味はほとんどありません。補正的措置は平成26年度の1回のみで、以降は実施されていません。基準が動く前提で対策を変える必要はありませんが、「絶対に180点固定」ではない点は押さえておきましょう。
合格率が低く見える3つの理由

合格率10%台という数字は、試験そのものの難しさだけを表しているわけではありません。
母数の性質による部分が大きく含まれます。
理由1:受験資格がなく、誰でも受けられる
行政書士試験には年齢・学歴・国籍による制限がありません。
実務経験も不要です。受験のハードルが低いぶん、準備不足のまま受ける層も母数に含まれます。実際、令和7年度は申込者の最年少が9歳、最年長が94歳と公表されています。
受験資格が課される試験と単純に合格率を比較すると、実態を見誤ります。
理由2:申込者と受験者の差が大きい
令和7年度は申込者63,845人に対し受験者50,163人で、約1万3,000人が受験していません。
合格率は受験者ベースで算出されるため欠席者は分母に入りませんが、この規模の離脱が起きる試験だという事実は、学習の継続そのものが難所であることを示しています。
理由3:範囲が広く、部分的な得意では届かない
科目別の基準点があるため、特定科目だけ極めても合格できません。
法令等で122点以上、基礎知識で24点以上を同時に満たす必要があり、全範囲に最低限触れることが前提になります。準備期間が短いと届きにくいのはこの構造によるものです。
独学者にとっての難易度を決める4つの仕組み

独学で受ける場合、難易度は合格率ではなく次の4点で決まります。
順に確認すれば、自分にとっての難しさが具体化します。
仕組み1:絶対評価なので、独学でも到達点が見える
これは独学にとって有利な要素です。
合格ラインが総得点の6割で決まっているため、模試や過去問で何点取れているかがそのまま到達度になります。
他の受験者の出来を気にする必要がなく、独学でも進捗を自己評価できます。
仕組み2:科目別の基準点があり、捨て科目を作れない
これは不利な要素です。
基礎知識科目は14問中6問(24点)以上が必要で、範囲が広く対策しづらいにもかかわらず切り捨てられません。
総得点で180点を超えていても、この基準を割れば不合格になります。
仕組み3:記述式60点を自己採点できない
独学の最大の弱点がここです。
40字程度で解答する記述式が3問・60点分あり、全体の2割を占めます。択一と違って正誤が一意に決まらないため、独学では自分の答案が何点なのか判断できません。
難易度が上がるというより、進捗が測れない領域が2割ある、という性質の問題です。
仕組み4:行政法と民法に配点が集中している
これは独学にとって有利に働きます。
法令等244点のうち行政法が約112点、民法が約76点で、2科目で188点分を占めます。
範囲が広いと言われる一方、優先順位は明確です。学習資源をどこに集中すべきかが数字で決まるため、独学でも計画を立てやすい構造です。
他の国家資格と比べた位置づけ

合格率だけを並べると、行政書士は宅建士より低く、社労士・司法書士より高い位置にあります。
ただし評価方式が違うため、合格率の高低をそのまま難易度の差として読むことはできません。
※表は横にスクロールできます。いずれも令和7年度(2025年度)試験の公表値(2026年8月18日確認)。
| 資格 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 評価方式 |
|---|---|---|---|---|
| 宅地建物取引士 | 245,462人 | 45,821人 | 18.7% | 相対評価(合格点が毎年変動) |
| 行政書士 | 50,163人 | 7,292人 | 14.54% | 絶対評価(180点で固定) |
| 社会保険労務士 | 43,421人 | 2,376人 | 5.5% | 基準点方式(科目別基準あり) |
| 司法書士 | 14,418人 | 751人 | 5.21% | 相対評価 |
ここで注意したいのが、宅建士の合格率18.7%という数字です。
宅建士は合格点が毎年変動する相対評価で、実質的に上位の一定割合が合格する仕組みです。つまり「6割取れば全員合格」という行政書士とは、合格の決まり方そのものが違います。
また、母数の性質も異なります。宅建士は業務上の必要から会社の指示で受験する層が多く、行政書士は個人の意思で受ける層が中心です。合格率の数字を横並びで比べても、難易度の比較としては成立しません。
行政書士の難易度に関するよくある質問

- 行政書士は独学で受かりますか?
-
合格率は直近5年で11.18〜14.54%です。ただし独学者だけの合格率は公表されていません。
- 行政書士ガチ勢の割合は?
-
受験回数や1日の学習時間の分布は公表されていないため、割合としては答えられません。
分かっているのは、令和7年度に申込者63,845人のうち約1万3,000人が当日欠席しているという事実です。
- 行政書士の勉強はしんどいですか?
-
科目別の基準点があり捨て科目を作れない点が負担になります。一方で6割を取れば合格するため、満点は不要です。
- 独学者だけの合格率はどれくらいですか?
-
公表されていません。
行政書士試験研究センターが公表しているのは全体の受験者数・合格者数・合格率と、年齢・職業などの属性であり、独学か講座受講かの内訳は集計されていません。
「独学の合格率は◯%」という記載を見た場合は、その出典を確認しておきましょう。
- 法律初学者でも受かりますか?
-
受験資格に制限はなく、初学者からの合格例もあります。
ただし必要な学習時間は学習経験によって大きく変わり、合格を保証できるものではありません。
法学部出身者や他の法律系資格の学習経験がある人と、まったくの初学者では、同じ到達点に必要な時間が数百時間単位で違います。
- 合格率が上がった年は狙い目ですか?
-
狙い目にはなりません。合格基準は満点の6割(300点満点なら180点)と定められており、事前に緩和が予告されるものではないためです。
過去には平成26年度に補正的措置で166点へ引き下げられた例がありますが、これは試験後に決まるもので、狙って利用できる性質のものではありません。
合格率の変動は出題の難易と受験者層の変化を反映した結果であり、事前に予測して対策を変える性質のものではありません。
- 難易度を踏まえて、独学で足りるでしょうか?
-
時間の確保、記述式への対処、進捗管理の3点が満たせるかで決まります。条件を整理しています。
行政書士 独学で十分かの判断基準はこちら - 具体的に何から始めればいいですか?
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配点が集中している行政法と民法からです。科目の順番と1日の進め方をまとめています。
行政書士 独学 勉強法の全手順はこちら - 宅建と比べるとどちらが難しいですか?
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独学でかかる負荷は行政書士のほうが重くなります。勉強時間と出題形式の差で比較しています。
行政書士 宅建 どっちが難しいかの比較はこちら - 難易度を見て、自分に取れるか判断したいです
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受験資格と評価方式の前提を踏まえ、独学が機能する条件を整理しています。
行政書士 資格 独学の適性判断はこちら - 独学合格はすごいことなのでしょうか?
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公表データで検証し、裏づけのある部分とない部分を分けて示しています。
行政書士 独学 すごいかの検証はこちら - どのくらいの勉強時間が必要ですか?
-
学習経験別の目安と、1日の確保時間からの逆算を整理しています。
行政書士 独学 勉強時間の目安はこちら

- 行政書士試験の年度別結果・合格基準・受験資格:一般財団法人 行政書士試験研究センター(2026年8月18日確認)
- 合格基準についての補足:センターが公表しているのは「法令等科目は満点の50%以上/基礎知識科目は満点の40%以上/試験全体は満点の60%以上」という割合です。本文中の点数(180点・122点・24点)は、300点満点・法令等244点・基礎知識56点という配点を前提とした換算値で、配点自体は合否通知書で通知されます。また同センターは、試験問題の難易度により補正的措置を加えることがあると明記しています(2026年8月18日確認)
- 宅地建物取引士資格試験の令和7年度結果:一般財団法人 不動産適正取引推進機構の公表値(2026年8月18日確認)
- 社会保険労務士試験(第57回)・司法書士試験の令和7年度結果:各試験の公表値(2026年8月18日確認)
- 科目別配点:近年の出題実績に基づく目安
本記事は合格や短期合格を保証するものではありません。合格率は年度・母数・試験制度が異なる資格間で単純比較できません。必要な学習時間や結果は、学習経験・確保できる時間によって異なります。

