「行政書士に独学で合格した」と聞くと、すごいと言われることがあります。一方で「行政書士は簡単」と書かれた記事も存在します。評価が真逆に割れているため、これから受ける側としては、自分が挑もうとしているものの大きさが分かりません。
この記事では、印象ではなく公表された数字で検証します。どこまでが数字で裏づけられ、どこからが根拠のない評価なのかを分けて示します。
本文の試験に関する数値は、行政書士試験研究センターの公表内容にあたって確認し、確認日を明記しています。伝聞や他サイトの引き写しではないので、数字はそのまま計画づくりに使えます。
試験結果は2026年8月18日に各実施機関の公表内容を確認したものです。
結論:数字上は「受験者の約7人に1人」。ただし独学の希少性は公表データにない

行政書士試験の合格は、数字で見れば受験者の約7人に1人が到達する水準です。
令和7年度(2025年度)は受験者50,163人に対し合格者7,292人、合格率14.54%でした(一般財団法人 行政書士試験研究センター公表)。
一方で、「独学で合格したこと」がどれだけ希少かを示すデータは存在しません。同センターは受験者数・合格者数・合格率と年齢などの属性を公表していますが、独学か講座受講かの内訳は集計していないためです。「独学合格者は◯%しかいない」という記載を見かけた場合、その数字には公的な裏づけがありません。
したがって、すごいかどうかを数字で断定することはできません。ただし、独学が難しくなる構造的な理由は特定できます。それは後半で扱います。
- 「すごい」と言われる3つの理由と、その数字上の裏づけ
- 申込から合格までの人数の推移
- 独学が実際に難しくなる2つの構造的理由
- 「すごいか」より判断に使うべき3つの数字
「すごい」と言われる3つの理由を数字で確かめる

独学合格が称賛される理由は、おおむね3つに分けられます。それぞれ数字で裏づけられるのか、順に見ていきます。
※表は横にスクロールできます。数値はいずれも令和7年度(2025年度)試験、公表主体は一般財団法人 行政書士試験研究センター(2026年8月18日確認)。
| 言われる理由 | 数字で確かめると | 裏づけ |
|---|---|---|
| 合格率が10%台と低い | 令和7年度は14.54%。直近5年は11.18〜14.54% | 裏づけあり |
| 範囲が広く、独学では手が回らない | 法令等46問+基礎知識14問。科目別の基準点があり捨て科目を作れない | 裏づけあり |
| 独学合格者はごく一部しかいない | 独学・講座受講の内訳は集計・公表されていない | 裏づけなし |
3つ目が重要です。独学の希少性を示す数字は公表されていないため、「独学だからすごい」という評価は、根拠のある事実というより印象に基づくものです。逆に言えば、独学だから極端に不利だと決めつける必要もありません。
申込から合格までの人数を追う

合格率だけを見ると、母数の性質が見えません。申込の段階から人数を追うと、この試験の実態が見えてきます。
※表は横にスクロールできます。令和7年度(2025年度)試験。公表主体:一般財団法人 行政書士試験研究センター。
| 段階 | 人数 | 前段階からの割合 |
|---|---|---|
| 受験申込者 | 63,845人 | — |
| 実際に受験した人 | 50,163人 | 約78.6%(約13,682人が欠席) |
| 合格者 | 7,292人 | 受験者の14.54%/申込者の約11.4% |
注目すべきは、申込者の2割超が試験当日に来ていないことです。1万3,000人規模の離脱が毎年起きています。学習が続かなかった、間に合わなかったという理由が多いと考えられ、この試験の難所が知識の量だけではないことを示しています。
受験資格に年齢・学歴・国籍の制限がない点も母数に影響します。令和7年度は申込者の最年少が9歳、最年長が94歳、合格者の最年少が13歳、最年長が77歳と公表されています(試験結果分析資料)。準備度合いの幅が非常に広い母数であるため、合格率をそのまま試験の難しさとして読むと実態からずれます。
他の国家資格と並べた位置
令和7年度(2025年度)の合格率を並べると、行政書士14.54%は宅地建物取引士18.7%より低く、社会保険労務士5.5%や司法書士5.21%よりは高い位置にあります。
ただし、これらは評価方式も母数の性質も異なるため、単純比較はできません。行政書士は総得点180点以上という絶対評価ですが、宅建士や司法書士は合格点が年度ごとに動く相対評価です。数字の並びだけで「行政書士は宅建より難しい」と結論づけることはできません。
独学が実際に難しくなる2つの構造的理由

「独学だからすごい」に公的な裏づけはありませんが、独学が構造的に不利になる点は特定できます。次の2つです。
理由1:記述式60点分の進捗を自分で測れない
記述式は40字程度で解答する問題が3問、配点は60点で全体の2割を占めます。択一と違って正誤が一意に決まらないため、独学では自分の答案が何点なのか判断できません。
難易度が上がるというより、全体の2割について進捗が見えないまま本番を迎える、という性質の不利です。模試や添削で外部の採点を1回でも入れれば、この不利は大きく減ります。
理由2:継続に外部の強制力がない
申込者の2割超が欠席しているという事実は、この試験の難所が継続にあることを示しています。講座にはカリキュラムと進捗管理という外部の強制力がありますが、独学にはありません。
裏を返せば、模試を先に申し込む、週次で正答率を記録するといった形で強制力を自作できれば、この不利も埋められます。
「すごいか」より判断に使うべき3つの数字

独学合格がすごいかどうかは、これから受ける人にとっては判断材料になりません。代わりに次の3つを見てください。
- 180点:合格に必要な総得点。300点満点の6割です。他人との比較ではなくこの数字に到達すればよい、という絶対評価であることが独学者にとって最大の追い風になります。
- 188点:行政法(約112点)と民法(約76点)の合計。法令等244点の8割弱がここに集中しており、時間配分の優先順位が数字で決まります。
- 24点:基礎知識科目の基準点(56点満点中)。14問中6問です。範囲は広いものの、要求水準は高くありません。
この3つを押さえると、「難関かどうか」という漠然とした問いが「どの科目に何時間使うか」という具体的な計画の話に変わります。
行政書士の独学合格に関するよくある質問

- 行政書士ガチ勢の割合は?
-
受験回数や1日の学習時間の分布は公表されていないため、割合としては答えられません。
分かっているのは、令和7年度に申込者63,845人のうち約1万3,000人が当日欠席しているという事実です。
- 行政書士試験に一発合格するのはすごいですか?
-
受験回数別の統計が公表されていないため、一発合格の割合は不明です。
ただし申込者の2割超が当日欠席している事実からは、1回目で受験まで到達すること自体が簡単ではないと分かります。
- 行政書士試験はマーチレベルですか?
-
大学の難易度と資格試験を換算した公式な基準はありません。
行政書士試験は絶対評価で6割を取れば合格するため、他人との比較で語る性質のものではありません。
- 独学合格者の割合は公表されていますか?
-
されていません。行政書士試験研究センターが公表しているのは受験者数・合格者数・合格率と、年齢などの属性です。独学か講座受講かは集計対象になっていません。
「独学合格者は◯%」という数字を見た場合は、その出典を確認しておきましょう。
- 行政書士は簡単だと書いている記事もあります
-
合格率10%台という数字と、6割を取れば合格する絶対評価という設計が、それぞれ別の印象を生んでいます。
どちらも事実で、矛盾はしていません。ただし、法令等122点以上・基礎知識24点以上という科目別の基準点があるため、短期間で一部の科目だけ仕上げる方法は成立しません。
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- 令和7年度(2025年度)行政書士試験の受験申込者数63,845人・受験者数50,163人・合格者数7,292人・合格率14.54%、申込者および合格者の年齢:一般財団法人 行政書士試験研究センター(2026年8月18日確認)
- 直近5年の合格率推移(11.18〜14.54%):同センター公表値(2026年8月18日確認)
- 宅地建物取引士(令和7年度18.7%):一般財団法人 不動産適正取引推進機構の公表値(2026年8月18日確認)
- 社会保険労務士(第57回・5.5%)/司法書士(令和7年度・5.21%):各試験の公表値(2026年8月18日確認)
- 科目別配点:近年の出題実績に基づく目安
本記事は合格や短期合格を保証するものではありません。合格率は年度・母数・評価方式が異なる資格間で単純比較できません。必要な学習時間や結果は、学習経験・確保できる時間によって異なります。

